ケーススタディCASE STUDY

医師国家試験の臨床問題形式17症例で、解説があります。

CASE11非溶血性副作用

<症例提示>

77歳 女性 体重62kg 身長 155cm
主訴:胆嚢癌再発(肺転移)
既往歴:高血圧症、糖尿病、いずれもコントロール良好

<臨床経過>

3年前に胆嚢癌のために肝右葉切除術を施行し、経過観察されていた。
今回再発(肺転移)を認め、化学療法(TS-1+ゲムシタビン)を施行した。
その後、化学療法による骨髄抑制(白血球 2400、Hb 5.4g/dL、血小板 5.8万)が出現し、同日午後に赤血球製剤2単位を投与された。
赤血球製剤投与開始約25分後に患者が悪寒・戦慄を訴えたため輸血を中止した。この時点で体温39.1°C(輸血前36.7°C)、血圧144/72mmHg(輸血前140/62mmHg)、酸素飽和度97%(room air)であった。

<学習課題1>

上記症例において輸血中の発熱の原因として可能性があるものを3つ選べ
  • ① 輸血用血液製剤による細菌感染
  • ② ABO不適合輸血(メジャーミスマッチ)
  • ③ 非溶血性発熱性副作用
  • ④ 輸血後GVHD (graft versus host disease)
    • 解答と解説を見る

      <学習課題1>

      上記症例において輸血中の発熱の原因として可能性があるものを3つ選べ
      • ① 輸血用血液製剤による細菌感染
      • ② ABO不適合輸血(メジャーミスマッチ)
      • ③ 非溶血性発熱性副作用
      • ④ 輸血後GVHD (graft versus host disease)
      <解答と解説>

      解答①・②・③

      輸血中あるいは終了間もない発熱の原因として①ABO不適合輸血、②製剤による細菌感染症、③輸血関連急性肺障害、④発熱性非溶血性輸血副作用、⑤アレルギー・アレルギー様反応が代表的である。 ④は、①②③のすべてが除外された場合に判定する。設問選択肢(4)の輸血後GVHDは、ドナー血液中 に存在するリンパ球が、患者体内で生着、増殖することによって輸血後1週間ほどで発生することが多 いため発生時期として不適切である。

      解説:発熱性非溶血性輸血副作用:FNHTR (Febrile non-hemolytic transfusion reaction)
      輸血副作用を、溶血の有無といった観点で分類すると、
      ① 溶血性副作用(ABO不適合輸血、不規則抗体による血管外溶血、その他抗赤血球抗体による溶血、 機械的・物理的刺激による赤血球破壊)
      ② 非溶血性副作用(溶血、輸血後GVHD、輸血後感染症を除くすべての副作用:じんましん、アレルギー様反応、発熱等) に大別される。
      発熱性非溶血性副作用の定義は以下の1項目以上の症状を認める
      ・38°C以上または輸血前より1°C以上の体温上昇
      ・悪寒・戦慄
      なお、頭痛や吐き気を伴う場合もあり、輸血中~輸血後数時間経過してから出現。 急性溶血副作用、細菌感染症など他の発熱の原因を認めない。
      *悪寒・戦慄のみで、発熱を認めない場合もある。

      頻度:赤血球製剤で0.03~0.19%、血小板製剤で0.04~0.11%との報告がある。
      原因:製剤中に含まれる白血球、保管中に産生されたサイトカイン、患者や製剤中の抗白血球抗体が原因となっていると考えられている。

      発生時の対応
      発熱性非溶血性輸血副作用は除外診 的な要素が強い。輸血中または輸血後に発熱を認めた場合、まずは患者生命に危機的な病態をもたらすABO不適合輸血、細菌感染症、TRALIを否定することが重要である。また発熱以外の所見(呼 吸困難、血圧低下、皮疹等)の有無について診察を行う。
      FNHTRと判断した場合の対処療法としてアセトアミノフェンが推奨される (血小板機能に影響を与えないため)。FNHTRではヒスタミンの関与は認めら れないため、じんましん・皮疹等とは異なり抗ヒスタミン剤の積極的投与適応とはならない。
      本症例では血液センターに精査を依頼したところ、患者血液中から抗HLA抗体 (Class II)が検出された。しかし、発熱の原因とは断定できなかった。