ケーススタディCASE STUDY

医師国家試験の臨床問題形式17症例で、解説があります。

CASE13長期輸血による鉄過剰症

<症例提示>

72歳 女性
主訴:倦怠感、体動時動悸
既往症・家族歴に特記すべきことなし

<臨床経過>

4年前検診にて汎血球減少症を指摘され、骨髄穿刺検査にて骨髄異形 成症候群と診断されたが経過観察となる。
昨年体動時動悸が出現し、白血球2,000、 Hb 6.5 g/dL、血小板 7.2万 にて赤血球液輸血が開始。当初は 1ヶ月に 1回の輸血頻度であったが、本年より輸血間隔が2週間に1回となり、現在までの総赤血球輸血量は40単位である。

<学習課題1>

赤血球液 2単位に含有される鉄量は?
  • ① 50mg
  • ② 100mg
  • ③ 200mg
  • ④ 500mg
    • 解答と解説を見る

      <学習課題1>

      赤血球液 2単位に含有される鉄量は?
      • ① 50mg
      • ② 100mg
      • ③ 200mg
      • ④ 500mg
      <解答と解説>

      解答③

      血液1ml当たり約0.5mgの鉄を含有しており、赤血球液2単位 (全血400ml由来) 輸血にて約200mgの鉄が負荷されることになる。
      一方鉄の排出については積極的に体外に出す機構がなく、生理的な消化管粘膜上皮の剥離等で1日1~2mgの鉄しか排泄しない。そのため赤血球輸血依存状態(月2単位以上の輸血を6ヶ月以上継続)では輸血後鉄過剰症による臓器障害が問題となるため、血清フェリチン値を定期的に測定する必要がある。

<学習課題2>

輸血後鉄過剰症にて認められない所見は次のどれか?
  • ① 心機能障害
  • ② 腎機能障害
  • ③ 肝機能障害
  • ④ 耐糖能低下
    • 解答と解説を見る

      <学習課題2>

      輸血後鉄過剰症にて認められない所見は次のどれか?
      • ① 心機能障害
      • ② 腎機能障害
      • ③ 肝機能障害
      • ④ 耐糖能低下
      <解答と解説>

      解答②

      鉄過剰症では肝臓、心臓、膵臓などに鉄が沈着して臓器障害を起こす。肝臓では肝酵素上昇・線維化・肝硬変が進行する。心臓では左心室駆出力低下や不整脈を来たす。膵β細胞への鉄 沈着では耐糖能低下から糖尿病を発症する。その他に造血系も障害され、造血抑制や無効造血の原因になると考えられている。

<学習課題3>

鉄キレート療法開始の目安となるのはいつか?
  • ① 輸血療法開始時
  • ② 輸血間隔が2週間未満となった時点
  • ③ 総赤血球輸血量が100単位以上
  • ④ 血清フェリチン値1,000ng/ml以上
    • 解答と解説を見る

      <学習課題2>

      鉄キレート療法開始の目安となるのはいつか?
      • ① 輸血療法開始時
      • ② 輸血間隔が2週間未満となった時点
      • ③ 総赤血球輸血量が100単位以上
      • ④ 血清フェリチン値1,000ng/ml以上
      <解答と解説>

      解答④

      わが国の輸血依存患者の調査(Takatoku)にて、鉄過剰症により心・肝障害を示した症例の90%以上で血清フェリチン値が1,000ng/mlを超えている。そのため鉄キレート療法は血清フェリチン値1,000ng/ml以上が連続する2回の測定で (2ヶ月以上にわたり)認められた場合に開始することが推奨される。
      なお輸血による鉄過剰症にて臓器障害が見られる程度の総輸血量は、肝臓 鉄濃度についてのAngelucciらの換算式で計算すると、体重50kgの患者で約40単位となる。 Takatokuの疫学調査において総輸血量が40単位となると、約75%の患者において血清フェリチン値が1,000ng/ml以上になると推定された。
      鉄キレート療法として注射製剤のデフェロキサミンは輸血の時だけの投与では効果が不十分と考えられるが、経口剤のデフェロラシロクスは1日1回の投与にて持続的な鉄排泄効果がある。デフェロラシロクスの有害事象は、悪心・嘔吐・下痢・腹痛等の消化器症状や皮疹以外に、クレアチニン上昇が用量依存性に認められるため腎機能検査 を定期的に行う必要がある。