ケーススタディCASE STUDY

医師国家試験の臨床問題形式17症例で、解説があります。

CASE14輸血のリスクマネージメント(1)

<症例提示>

65歳、男性
身 長:165cm
体 重 :70kg

<臨床経過>

健診で PSAの上昇が指摘され、精密検査を実施したところ、前立腺癌が発見された。経尿道前立腺切除術が予定され、入院となった。輸血の可能性は低いが、Type & Screen にて準備するため、血液型検査が必要と判断された。
当院で血液型検査を実施したことはなかったが、 患者は以前O型Rh(+)と言われたと主治医に伝えた。主治医は、血液型検査を実施するため、 患者より採血を実施した。しかし、主治医は、同室の隣のベッドの患者も同時に採血しており、試験管を取違えて検体を入れてしまった。
輸血部で検査され、片方はA(+)、もう一方はO(+)と 判定された。患者の血液型検査をもう一回実施する必要があると輸血部より連絡があったが、主治医は忙しかったため、担当看護師に患者の採血を依頼した。
看護師は、同病棟に入院中の 同姓患者(O型)の採血を実施し、クロスマッチ用検体と共に輸血部に提出した。
その結果、 前回の血液型と一致し、患者の血液型はO(+)と決定し、リストバンドにも印字された。手術の ためにType & ScreenでO(+)の赤血球液 4単位が準備された。術中、予想以上の出血が認められ、赤血球液を使用することになった。
その際、簡易クロスマッチの主試験を実施し、陰性 であることを確認の上、供給した。輸血時の副作用は認められず、手術は無事終わった。患者 は無事退院したが、数年後、他の疾患で再度入院となった際、血液型はA(+)であることが判明した。

<学習課題1>

リスクマネジメント上、本症例で起こった問題で誤っているのはどれか?
  • ① ABO型不適合輸血が実施され、オカレンス事例であった。
  • ② 検査採血時の患者・検体照合が実施されていなかった。
  • ③ 簡易クロスマッチで主試験のみ実施されたため、取違えに気付くことが出来なかった。
  • ④ "スイスチーズモデル"の典型例であった。
  • ⑤ 何れでもない
    • 解答と解説を見る

      <学習課題1>

      リスクマネジメント上、本症例で起こった問題で誤っているのはどれか?
      • ① ABO型不適合輸血が実施され、オカレンス事例であった。
      • ② 検査採血時の患者・検体照合が実施されていなかった。
      • ③ 簡易クロスマッチで主試験のみ実施されたため、取違えに気付くことが出来なかった。
      • ④ "スイスチーズモデル"の典型例であった。
      • ⑤ 何れでもない
      <解答と解説>

      解答⑤

      本事例は、様々な段階において、不注意や不十分な作業などによってオカレンスに至った事例である。
      しかし、結果的には異型適合輸血であったため、副作用など生じることなく、入院・治療中には気付かれず、患者は退院している。
      この事例が異型不適合輸血であった場合、重大な副作用を来たしていた可能性があり、偶然に問題が起こらなかったと考えるべきである。
      このような、様々な要因が重なることで事故が起きることを、スイスチーズモデルと呼ぶ。たくさんの穴が開いたスイスチーズのスライスを何枚も並べ、チーズ1枚 1枚を、作業者、設備機 器、環境条件と考える。このチーズの穴は、人の注意、設備機器の使いにくさ、作業環境の悪さなどを示す。体調や疲労などの状況により、同じ作業者でも穴の大きさ、位置が時々刻々と変化すると考える。設備機器や環境条件も同じように、機械の調子や自然環境が変化していく。さらに、穴の大きさ、開き方には、組織風土、国民性による傾向があると考えられている。このチーズを並べて、光を当てたときに、穴が重ならなければ光は見えないが、穴が重なると光が漏れて 見えてしまう。光が漏れて見えたことは、事故が起きたことを意味する。チーズを多数並べれば、事故を防ぐことが出来るが、それでも穴が重なる確率が減るだけであり、ゼロになるわけではない。大切なのは、1枚1枚のチーズの穴をふさぐという基本的なヒューマンエラー防止対策を行うことである。

<学習課題2>

輸血の医療過誤を防止するため、次のステップのうち重要でないのはどれか?
  • ① 検査採血時の患者・検体照合の徹底
  • ② 血液型検査の 2回以上の実施、血液型検査実施時及び結果入カ時の二重チェックの徹底
  • ③ 輸血用血液の出庫時のコンピュータクロスマッチの実施
  • ④ 輸血実施時の患者・製剤照合の徹底
  • ⑤ 何れでもない
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      <学習課題2>

      輸血の医療過誤を防止するため、次のステップのうち重要でないのはどれか?
      • ① 検査採血時の患者・検体照合の徹底
      • ② 血液型検査の 2回以上の実施、血液型検査実施時及び結果入カ時の二重チェックの徹底
      • ③ 輸血用血液の出庫時のコンピュータクロスマッチの実施
      • ④ 輸血実施時の患者・製剤照合の徹底
      • ⑤ 何れでもない
      <解答と解説>

      解答⑤

      輸血を実施するために様々なステップがあり、それぞれがスライスチーズ1枚と考える。まず、血液型検査を実施するための採血時の患者・検体取違え防止対策が必要であり、患者・検体照合システムの利用、また血液型検査を異なる時期に採取した検体を用いて、2回以上実施することが行われている。次に輸血部での 検査実施時及び結果入力時の二重チェックが重要である。また、クロスマッチ用検体の取違え防止、準備した輸血用血液の出庫時のコンピュータクロスマッチも重要である。供給された輸血用血液を使用する際、患者・製剤の照合確認も必要不可欠である。