医師国家試験の臨床問題形式17症例で、解説があります。
CASE2緊急輸血(外傷患者への輸血)
<症例提示>
17歳、女性。
既往症・家族歴に特記すべきことなし。
身 長:153cm、体重:48kg
<臨床経過>
自転車で走行中に自動車と接触し、転倒した際に左側腹部を強打した。救急車にて来院したが、来院時、意識は朦朧としており、血圧 70/40mmHg、脈拍 120/分(微弱)、救急車で血管を確保し、輸液を開始していた。同行者はおらず、血液型は不明。
しかし、血圧低下のため、検査用採血は困難であった。救急部で輸血を開始し、直ちに緊急手術となった。 脾臓破裂による大量出血が確認され、脾臓摘出となった。
術中、腹腔内への出血量を含め、 約4,000mlの出血であることが確認された。脾臓摘出により出血はコントロールできたが、 大量の輸血を要した。
<学習課題1>
この患者に輸血するに当たって、正しいのはどれか?
- ① 輸血に関する説明と同意書の取得が困難な緊急事態の場合、同意書の取得は不要である。
- ② 輸血同意書が取得できないので、輸血は実施しない。
- ③ 血液型検査のための採血が困難なため、患者(または家族・付き添い)に聞いた血液型の輸血を実施する。
- ④ 少量の採血でも構わないので、1回の血液型検査を実施して、同型の血液を輸血する。
- ⑤ 血液型が確定するまでは、O型赤血球(異型適合血)の輸血を実施する。
- ① 輸血に関する説明と同意書の取得が困難な緊急事態の場合、同意書の取得は不要である。
- ② 輸血同意書が取得できないので、輸血は実施しない。
- ③ 血液型検査のための採血が困難なため、患者(または家族・付き添い)に聞いた血液型の輸血を実施する。
- ④ 少量の採血でも構わないので、1回の血液型検査を実施して、同型の血液を輸血する。
- ⑤ 血液型が確定するまでは、O型赤血球(異型適合血)の輸血を実施する。
<学習課題1>
この患者に輸血するに当たって、正しいのはどれか?
<解答と解説>
解答⑤
意識が朦朧としていることから、輸血に関する事前の説明は困難であるため、事後の説明及び同意書の取得となる。また、本人が未成年者であることから、保護者への説明及び同意も必要となる。
血液型検査は、原則として、異なる時期に採取した血液検体を用いて、2回以上実施することが必要であり、患者に聞いた血液型や他施設からの情報に基づいて輸血することは禁忌である。また、1回の血液型検査では、検体取違えなどのリスクがあるため、十分とは言えない。血液型検査を2回以上実施できない場合、異型適合血である「O型」赤血球の輸血を行うことが最も安全である。患者の状態が安定し、血液型検査を 2回以上実施して血液型が確定した時点で同型の輸血に切り替える。
<学習課題2>
この患者の輸血について、誤っているのはどれか?
- ① 患者の様態が安定した時点で採血を2回以上実施し、血液型を確定した上で、同型の輸血に切り替える。
- ② 循環血液量以上の出血があったため、新鮮凍結血漿(FFP)の輸血も必要となる可能性が高い。血液型が確定するまで、AB型のFFPを輸血する。
- ③ 血小板輸血が必要になる可能性が高い。血液型が確定するまで、O型の血小板を輸血する。
- ④ 妊娠可能な若い女性でRh式血液型は不明のため、極力Rh陰性の赤血球製剤を輸血する。
- ⑤ 輸血による感染症伝播の可能性を考慮し、遡及調査対応のための輸血前検体を採取し、保管する必要がある。
- ① 患者の様態が安定した時点で採血を2回以上実施し、血液型を確定した上で、同型の輸血に切り替える。
- ② 循環血液量以上の出血があったため、新鮮凍結血漿(FFP)の輸血も必要となる可能性が高い。血液型が確定するまで、AB型のFFPを輸血する。
- ③ 血小板輸血が必要になる可能性が高い。血液型が確定するまで、O型の血小板を輸血する。
- ④ 妊娠可能な若い女性でRh式血液型は不明のため、極力Rh陰性の赤血球製剤を輸血する。
- ⑤ 輸血による感染症伝播の可能性を考慮し、遡及調査対応のための輸血前検体を採取し、保管する必要がある。
<学習課題2>
この患者の輸血について、誤っているのはどれか?
<解答と解説>
解答③
血液型が確定できない場合、異型適合の「O型」赤血球の輸血を開始し患者の様態が安定した時点で血液型検査を2回以上実施し、適合血の輸血に切り替える。また血小板は血液型不明時は抗A・抗B抗体の輸注を避けるためAB型を選択する。
しかし、今回の事例のように輸液や異型適合血が輸血されている場合、血液型検査を実施する際にミックス・フィールドや弱陽性反応が見られることがあるため、注意が必要である。また、妊娠可能な女性であることを考慮すると、極力、Rh陰性の輸血用血液を準備することが望ましい。特に赤血球液は、抗原となる赤血球が大量に輸注されるため、Rh陰性血の確保に努める。
現在、赤十字血液センターが供給する血小板製剤(アフェレーシス由来)や新鮮凍結血漿(FFP)における赤血球混入率は非常に低くなっている。
しかし、0.01mlの赤血球の輸注により抗体を産生し得るとされており、アフェレーシス由来の血小板製剤は約9-10バッグ、FFP1 (1単位)は約9バッグで抗体が産生される計算になる。したがって、血小板製剤やFFPについても、極力、Rh陰性のものを準備できるよう努力する。しかし、日本人のRh陰性の頻度が 0.5%(1/200人)であることから、Rh陰性の輸血用血液を準備することは困難なことが多く、実際にはRh型が不明な患者でもRh陽性のものが使用されている現状である。
患者がRh陰性であることが確認され、少量の赤血球が輸血されていた場合、 Rh免疫グロブリン(RhIG)の投与を検討する。抗D抗体20~25μgの投与により、D陽性赤血球1.0ml (全血でない)を中和することが確認されている。
したがって、血小板製剤やFFPが少量輸血された場合には考慮する必要がある。また、輸血を予定する患者に対して、必ず遡及調査対応のための輸血前検体を採取し、保管する必要がある。保管期間は最低2年間と考える。 万が一輸血によるウイルス感染伝播が疑われた場合、遡及調査用の輸血前検体を用いてウイルス検査を実施し、輸血によるウイルス感染伝播が確認されれ ば患者は医療費などを免除する“感染被害救済制度”の対象となる。