ケーススタディCASE STUDY

医師国家試験の臨床問題形式17症例で、解説があります。

CASE3小児輸血(新生児交換輸血)

<症例提示>

生後12時間の男児

<臨床経過>

産科病院で複数妊娠初回分娩の母親から出生した男児。在胎40週、出生体重2900g。出生時仮死なし。出生後8時間で可視黄疸が出現し、早発黄疸の診断で転送されてきた。
 来院時は生後12時間。Hb 8.9g/dL、Ht 31%、網赤血球 10.2%、末梢血塗抹標本で赤芽球を認めている。総ビリルビン値 10.5mg/dLであった。
新生児科医師は新生児溶血性疾患を疑い検査を依頼、交換輸血を計画した。

<学習課題1>

新生児溶血性疾患診断のために収集すべき情報はどれか?最も重要なものを二つ選択しなさい。
  • ① 新生児早発黄疸の家族歴
  • ② 児のABO血液型、Rh(D)血液型
  • ③ 児の直接抗グロブリン検査
  • ④ 母の直接抗グロブリン検査
  • ⑤ 母の総ビリルビン値
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      <学習課題1>

      新生児溶血性疾患診断のために収集すべき情報はどれか?最も重要なものを二つ選択しなさい。
      • ① 新生児早発黄疸の家族歴
      • ② 児のABO血液型、Rh(D)血液型
      • ③ 児の直接抗グロブリン検査
      • ④ 母の直接抗グロブリン検査
      • ⑤ 母の総ビリルビン値
      <解答と解説>

      解答②・③

      新生児溶血性疾患(Hemolytic Disease of Newborn, HDN) 診断のために実施すべき検査は下記である。
      ① 児ABO血液型、Rh(D)血液型
      ② 児直接抗グロブリン試験
      ③ 母ABO血液型、Rh(D)血液型
      ④ 母の不規則抗体スクリーニング検査、抗体同定検査

<学習課題2>

新生児溶血性疾患による早発黄疸に対する交換輸血で用いる適合血はどの組み合わせか?正しい組み合わせを二つ選択しなさい。
選択した適合血はいずれも新鮮凍結血漿と混合して合成血として使用する。
  • ① ABO不適合妊娠が原因の場合
    --------児ABO血液型と同型の放射線照射済み赤血球液
  • ② ABO不適合妊娠が原因の場合
    -----母親ABO血液型と同型の放射線照射済み赤血球液
  • ③ ABO不適合妊娠が原因の場合
    -----O型の放射線照射済み赤血球液
  • ④ Rh血液型不適合妊娠が原因の場合
    -----Rh式不規則抗体に対する対応抗原陰性の放射線照射済み赤血球液
  • ⑤ Rh血液型不適合妊娠が原因の場合
    -----Rh式表現型が父親と同じ抗原陰性の放射線照射済み赤血球液
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      <学習課題2>

      新生児溶血性疾患による早発黄疸に対する交換輸血で用いる適合血はどの組み合わせか?正しい組み合わせを二つ選択しなさい。
      選択した適合血はいずれも新鮮凍結血漿と混合して合成血として使用する。
      • ① ABO不適合妊娠が原因の場合
        --------児ABO血液型と同型の放射線照射済み赤血球液
      • ② ABO不適合妊娠が原因の場合
        -----母親ABO血液型と同型の放射線照射済み赤血球液
      • ③ ABO不適合妊娠が原因の場合
        -----O型の放射線照射済み赤血球液
      • ④ Rh血液型不適合妊娠が原因の場合
        -----Rh式不規則抗体に対する対応抗原陰性の放射線照射済み赤血球液
      • ⑤ Rh血液型不適合妊娠が原因の場合
        -----Rh式表現型が父親と同じ抗原陰性の放射線照射済み赤血球液
      <解答と解説>

      解答③・④

      新生児溶血性疾患
      新生児溶血性疾患の黄疸は、赤血球酵素異常症や遺伝性球状赤血球症などの膜異常症などの他、多くは母児間の血液型不適合妊娠が原因となる。生後短時間で進行性の黄疸(早発黄疸。生後24時間以内血清総ビリルビン値8mg/dL以上、1日5mg/dL以上の上昇)が出現、同時に末梢血に赤芽球出現を伴う貧血を呈する。軽症であれば光線療法で治療するが、生下時体重1,500g以上2,500g未満の低出生体重児では、生後24時間の血清総ビリルビン値が10mg/dLを超えるとき、 2,500g以上の成熟児では12mg/dLで交換輸血の適応になる。また血清総ビリルビン値以外の核黄疸リスク因子にも注意を払い適応を考える。
      近年RhIgの投与などをはじめとする母体の周産期管理の向上により新生児溶血性疾患(HDN)の重症例は少ない。しかしHDNがRhIgで対応できない血液型不適合妊娠の場合や、抗体価が高い場合には注意が必要である。
      血液型不適合妊娠への対処では、母体の持つ不規則抗体の検索が重要であり、妊娠中期以降からの不規則スクリーニング検査を行う。本症例は初回分娩であるが、複数回の妊娠既往など不規則抗体を保有する確率が高い。
      また初回妊娠であっても少量ながら胎児血が母体血に流入する現象(母児間輸血)があり、この現象は妊娠2か月から確認され、理論上初回の妊娠でも血液型不適合は起こる可能性がある。

      新生児溶血性疾患の診断検査
      HDNで最も頻度が高いのはABO血液型不適合妊娠による新生児溶血性疾患 (ABO-HDN)である。母児間にABO不適合の組み合わせがある場合、ABO–HDNを考慮し以下の検査を行うことが重要である。①母親のIgG型抗A・抗B抗体価の測定(512倍以上) ②児血清中の間接抗グロブリン法による抗A・抗B抗体価 (8倍以上) ③児の直接抗グロブリン試験 ④児血球より抗体解離試験。
      ABO-HDNの診断基準は、母児間にABO不適合があり早発黄疸を呈する間接型優位の高ビリルビン血症で、母血清中の抗A・抗B抗体価が512倍以上である。
      ABO-HDN以外で多くみられるのがRh(E)による不適合妊娠である。この理由は、日本人の50%がE抗原を保有しているためである。抗E抗体によるHDNは、胎児 水腫などの重大な症状を引き起こす可能性は低い。
      一方、Rh(c)によるHDNは、Rh(E)よりも重症化しやすく、抗体価が高力価で検出される場合がある。

      新生児溶血性疾患に対する交換輸血で使用する適応血の選択
      ABO血液型不適合による新生児溶血性疾患(HDN)では、放射線照射済みO型赤血球液とAB型新鮮凍結血漿の2:1合成血を調整して使用する。
      ABO血液型以外でのHDNは、母保有の不規則抗体の対応抗原が陰性かつ、児とABO血液型一致の放射線照射済み赤血球液と新鮮凍結血漿で合成血を調整して使用する。
      低出生体重児の場合は交換輸血により血小板低下を来すことがあるため、血小板製剤を加える。