医師国家試験の臨床問題形式17症例で、解説があります。
CASE4術前準備血
<症例提示>
58歳 男性
主訴:食思不振、胃部不快
既往症・家族歴に特記すべきことなし
<臨床経過>
数ヶ月前から食欲低下や胃部の不快感が続き、検診で異常を指摘されたため総合病院の内科を受診。精査目的で上部消化管内視鏡検査で胃噴門部に表面不整な隆起性病変が認められた。肉眼的にボールマン1型胃癌と判断され、病変部の生検の結果、分化型腺癌細胞が認められた。
胃全摘手術の予定となり、術前検査では血液検査で軽度の貧血(Hb11.2g/dL) を認める以外には心電図や呼吸機能検査に異常なく、肝機能や腎機能も正常であった。
この患者の受持医であるあなたは上級医から「手術で出血する可能性は低いが、念のために輸血を準備しておくように」と指示された。
<学習課題1>
一般的に、「出血する可能性の低い手術に備えた輸血」はどのように考えればよいか?
- ① 赤血球製剤を10単位準備しておく
- ② 赤血球製剤を2単位だけ準備しておく
- ③ 輸血の準備をする必要はない
- ④ Type & Screen法での輸血準備を依頼する
- ① 赤血球製剤を10単位準備しておく
- ② 赤血球製剤を2単位だけ準備しておく
- ③ 輸血の準備をする必要はない
- ④ Type & Screen法での輸血準備を依頼する
<学習課題1>
一般的に、「出血する可能性の低い手術に備えた輸血」はどのように考えればよいか?
<解答と解説>
解答④
① 術中出血が予想されほぼ確実に輸血を行うのであれば、予測される出血量に応じた量(単位数)の赤血球製剤(RBC-LR)を当該患者用に確保しておくこ ことになるが、出血量が少なく輸血が実施されない場合には準備された赤 血球製剤が無駄になってしまう。また、特定の患者のために準備された輸血製剤は、その患者への割り付けが解除されない限り他の患者に使用できないため、過剰在庫を招くことにもなる。
② 術前の輸血検査で患者が不規則抗体陽性と判明した場合など、適合血の準備に時間を要すると考えられるときは最少単位数の輸血を準備することもある。
③ 「出血する可能性が低い」と考えられる手術では輸血は不要のことが多いが、全く何の準備もしていなければ、万一の出血の際に対応できない。
④ 待機的手術で直ちに輸血を行う可能性が低いと予想される場合の輸血準備方法が Type & Screen (T&S)である。
<学習課題2>
そのために行うべき輸血検査は何か?
- ① 血液型検査(ABO式、Rh式)
- ② 血液型検査と不規則抗体スクリーニング
- ③ あらかじめ交差適合試験を実施
- ④ 特に検査を行う必要はない
- ① 血液型検査(ABO式、Rh式)
- ② 血液型検査と不規則抗体スクリーニング
- ③ あらかじめ交差適合試験を実施
- ④ 特に検査を行う必要はない
<学習課題2>
そのために行うべき輸血検査は何か?
<解答と解説>
解答②
輸血を行う可能性が低いと考えられる場合は、患者のABO式とRh式血液型、及び臨床的に意義のあると考えられる不規則抗体の有無 (不規則抗体スクリーニング)を調べる。 RhD陽性で不規則抗体が陰性であれば、Type & Screenの適応となるので、事前に交差適合試験を行って輸血を準備することをしない。
逆に、患者がRhD陰性(日本国内では、RhD陰性率0.5%)、不規則抗体陽性の場合には、予め当該患者用に必要量の赤血球製剤を確保する。血液型判定には最短でも15分、不規則抗体スクリーニングにも約1時間必要である。血液型亜型や、不規則抗体陽性の場合の対処も考え、検査は事前に時間的余裕を持って行う。
<学習課題3>
万一、手術中の出血量が多く、輸血が必要になった場合にはどうすればよいか?
- ① 交差適合試験を省略し、急いで輸血を払い出してもらう
- ② 生理食塩液法のみの簡易交差適合試験を実施して輸血を払い出してもらう
- ③ クームス法まで含めた交差適合試験を実施後に輸血を払い出してもらう
- ④ O型赤血球製剤を急いで払い出してもらう
- ① 交差適合試験を省略し、急いで輸血を払い出してもらう
- ② 生理食塩液法のみの簡易交差適合試験を実施して輸血を払い出してもらう
- ③ クームス法まで含めた交差適合試験を実施後に輸血を払い出してもらう
- ④ O型赤血球製剤を急いで払い出してもらう
<学習課題2>
万一、手術中の出血量が多く、輸血が必要になった場合にはどうすればよいか?
<解答と解説>
解答②
① これは緊急輸血の際に血液型適合血を払い出すときの対応であり、T&Sと混同してはならない。
② 不規則抗体が陰性なので、生理食塩液法で主試験の適合(ABO血液型の適合) が確認できれば、適合血として払い出すことができる。
③ 輸血後に溶血などの副作用を起こす原因となる抗体を検出する方法が間接クームス法(間接抗グロブリン法)である。T&Sの適応(不規則抗体が陰性)であれば、クームス法を行ってから輸血を払い出す必要はない。
④ O型赤血球製剤の緊急出庫は、原則として血液型不明の患者に対して緊急に輸血が必要なときの対応である。また、救命を目的とした、やむを得ない場合、同型血液型不足時にO型赤血球製剤を異型適合輸血として用いることもある。