ケーススタディCASE STUDY

医師国家試験の臨床問題形式17症例で、解説があります。

CASE6自己血輸血

<症例提示>

72歳 男性
主訴:左股関節痛
既往歴:狭心症

<臨床経過>

5年前から歩行時に左股関節痛の痛みを自覚し、非ステロイド性鎮痛薬の内服を行っていたが、症状は徐々に憎悪し、歩行困難となった。近医から総合病院の整形外科を紹介された。変形性股関節症と診断され、3週間後に自己血輸血での全人工股関節置換術が予定された。身長 174cm。体重71kg。血圧132/72mmHg。血液検査ではHb 12.9g/dLであった。また、16年前に狭心症の発作があり、カルシウム拮抗薬を常用しているが、それ以後は発作は認めない。
整形外科の担当医よりこの患者の手術のために、術前に800mLの貯血を外来で行うよう輸血部門に依頼された。

<学習課題1>

患者へのインフォームド・コンセントにおいて不適切なものはどれか?
  • ① 自己血は、副作用の少ない安全な輸血法です。
  • ② 必要な量を貯めておきますが、あまったら他の患者に転用します。
  • ③ 自己血が不足した場合には、同種血を使用することもあります。
  • ④ 血液の処理、保存上で不適切なこと(破損、汚染など)がおこれば廃棄します。
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      <学習課題1>

      患者へのインフォームド・コンセントにおいて不適切なものはどれか?
      • ① 自己血は、副作用の少ない安全な輸血法です。
      • ② 必要な量を貯めておきますが、あまったら他の患者に転用します。
      • ③ 自己血が不足した場合には、同種血を使用することもあります。
      • ④ 血液の処理、保存上で不適切なこと(破損、汚染など)がおこれば廃棄します。
      <解答と解説>

      解答②

      ① 自己血輸血は理論上は同種血輸血の副作用である非溶血性副作用、溶血性副作用、輸血後GVHDと細菌感染以外の感染症を回避しうる安全な輸血法である。しかし、施設における輸血管理体制が整っていなければ、取り違えなど重大な医療過誤につながる危険性がある。また、献血は健常者から行う事に対し、自己血採血(貯血)は、患者から急性出血させていることを念頭に置かねばならない。
      ② 最大血液準備量(MSBOS) あるいは外科手術血液準備式(SBOE) に従い、必要量を貯血するが、使用されなかった場合は廃棄される。
      ③ 予定外の多量の出血をきたし、準備した自己血のみでは不足する場合は、必要に応じて同種血を併用する。
      ④ 細菌感染やバックの破損がみられた場合は使用しない。

<学習課題2>

この患者の貯血について正しいものはどれか?
  • ① 1回の貯血量の上限は600mLとする。
  • ② 採血間隔は原則として1週間に2回とする。
  • ③ 手術予定日の1日以内まで貯血は可能である。
  • ④ 鉄剤を投与する。
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      <学習課題2>

      この患者の貯血について正しいものはどれか?
      • ① 1回の貯血量の上限は600mLとする。
      • ② 採血間隔は原則として1週間に2回とする。
      • ③ 手術予定日の1日以内まで貯血は可能である。
      • ④ 鉄剤を投与する。
      <解答と解説>

      解答④

      日本自己血輸血学会貯血式自己血輸血実施指針(2014)にそって貯血を行うことが望まれる。
      ① 体重50kg以上の患者の1回採取量の上限は400mLとされている。体重50kg以下の患者は、400mL x 患者体重/体重50kgを参考とする。
      ② 採血間隔は原則として1週間に1回とする。
      ③ 手術予定日の3日以内の採血は行わない。
      ④ 初回採血の1週間前から毎日、経口鉄剤200mgを投与する。貯血量が800mL以上で1週間以上の貯血期間を予定する患者の術前自己貯血ではエリスロポエチン製剤の投与が認められている。
      成人でヘモグロビン濃度が13g/dL未満の患者には初回採血 1週間前から、ヘモグロビン濃度が13~14g/dLの患者には、初回採血後より、エリスロポエチン製剤(1回24,000国際単位)を最終採血まで週1回投与する。

<学習課題3>

貯血時の指導で適切なものはどれか?
  • ① 採血前は4時間食事はとらない。
  • ② 当日は常用薬(カルシウム拮抗薬)を服用しない。
  • ③ 採血後の最初の排尿は座位で行う。
  • ④ 自家用車を運転して来院してもらう。
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      <学習課題3>

      貯血時の指導で適切なものはどれか?
      • ① 採血前は4時間食事はとらない。
      • ② 当日は常用薬(カルシウム拮抗薬)を服用しない。
      • ③ 採血後の最初の排尿は座位で行う。
      • ④ 自家用車を運転して来院してもらう。
      <解答と解説>

      解答③

      血管迷走神経反射(VVR)は、採血時に注意しなければならない副作用である。これを予防するために、採血前の食事は省かないで必ず摂るよう指導する。
      また、合併症の予防に採血当日も常用薬を服用させる。帰宅途中または帰宅後に遅発性VVR様症状が約10%に発生するので注意を要する。男性が自己血採血後に最初に排尿する場合には座位で行う。採血後には水分を十分に摂り、激しい運動や労働および飲酒は避け、原則として採血当日は入浴や車の運転も避ける。外来患者として自己血採血を行う場合には、付き添いとともに来院することが望ましい。
      [日本自己血輸血学会貯血式自己血輸血実施指針(2014)]