ケーススタディCASE STUDY

医師国家試験の臨床問題形式17症例で、解説があります。

CASE8血小板輸血(2)

<症例提示>

53歳 女性

<臨床経過>

急性骨髄性白血病と診断されて化学療法を受けている。これまでに血小板輸 血(10単位/回)を3回受けて、血小板数はいずれもほぼ期待通りに増加した。しかし、4回目の血小板輸血から2回続けて輸血翌日の血小板数が増加しなくなっ た。発熱はない。下血などの明らかな活動性出血はなく、肝脾腫はない。四肢 に点状出血を認める。25歳の時に分娩後の弛緩出血で輸血を受けたことがある。
検査所見:赤血球280万、Hb 7.2g/dL、Ht 26%、白血球2,000 、血小板0.5万、 FDP 0.2 μg/mL 。
今後の血小板輸血の方針について相談された。

<学習課題1>

今後の方針を決定する上で必要な検査はどれか?2つ選べ
  • ① 輸血1時間後の血小板数
  • ② 血小板関連IgG(PAIgG)
  • ③ 抗HLA抗体スクリーニング
  • ④ 不規則抗体スクリーニング
    • 解答と解説を見る

      <学習課題1>

      今後の方針を決定する上で必要な検査はどれか?2つ選べ
      • ① 輸血1時間後の血小板数
      • ② 血小板関連IgG(PAIgG)
      • ③ 抗HLA抗体スクリーニング
      • ④ 不規則抗体スクリーニング
      <解答と解説>

      解答①・③

      血小板輸血後の血小板数が予期したほど増加しないことを血小板輸血不応状態と呼んでいる。この診断には補正血小板増加数 corrected count increment (CCI)が用いられる。
      [CCI=血小板増加数 (/μl) X 体表面積(m²) / 輸血血小板総数 (×10¹¹)]
      輸血1時間後のCCI 7,500以下もしくは輸血翌日のCCI 4,500以下が2回以上の輸血で見られたときに診断する。 この原因には、免疫学的要因(抗HLA抗体)と非免疫学的要因(感染、脾腫、薬剤等)がある。本例では感染(発熱)や脾腫はなく、分娩歴、輸血歴があることから抗HLA抗体による不応症であることが疑われる。

      ① 輸血1時間後のCCIは抗HLA抗体による不応症の診断に有用である。
      ② PAIgGは、血小板減少症の原因を問わず概ね増加しているので診断的価値が乏しい。
      ③ 抗HLA抗体検査は血小板輸血不応症の診断に極めて重要である。
      ④ 不規則抗体は抗赤血球抗体であり、血小板輸血不応症とは関連がない。

<学習課題2>

血小板輸血不応症であることが確定した時に今後の血小板輸血はどのようにするか?
  • ① 血小板1-2万以下の期間は濃厚血小板10単位を連日輸血する
  • ② γグロブリン大量療法後に濃厚血小板10単位を投与する
  • ③ HLA適合血小板を輸血する
  • ④ 洗浄血小板を輸血する
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      <学習課題2>

      血小板輸血不応症であることが確定した時に今後の血小板輸血はどのようにするか?
      • ① 血小板1-2万以下の期間は濃厚血小板10単位を連日輸血する
      • ② γグロブリン大量療法後に濃厚血小板10単位を投与する
      • ③ HLA適合血小板を輸血する
      • ④ 洗浄血小板を輸血する
      <解答と解説>

      解答③

      ① 米国(ASCO)と英国(BCSH)で発表された血小板輸血ガイドラインではHLA適合血小板が使用できない状況にある血小板輸血不応患者にランダムドナー由来濃厚血小板製剤を予 防的に連日輸血することは避けるべきであり、出血イベントが生じたときにのみ輸血す る方針が推奨されている。
      ② 無作為対照試験によって血小板輸血不応患者へのγグロブリン大量療法は無効であるとされており、正当化されない。
      ③ HLA適合血小板の輸血によって、60-70%の患者で血小板数の増加が期待できる。しかしHLA適合血小板の供給には時間がかかるため、癌化学療法に伴う血小板減少症では血小板輸血が必要となる時期を予測して輸血計画を立てざるを得ないのが現状である。なお血小板特異抗原(HPA)に対する抗体による不応症も存在するが少なく、またHPA 適合血小板の供給体制は確立していないので、輸血不応症における抗HPA抗体検査の 臨床的価値は乏しい。
      ④ 洗浄血小板は発熱反応などのアレルギー性副作用の防止効果はあるが、抗HLA抗体による血小板輸血不応症には無効である。